その手に握られていたのは革張りの豪奢な本だった
まず目に入るのは本そのものではなく
周りに巻きつけられた鎖だ
かなり古くから存在しているのだろうか
その鎖は真っ黒に汚れているが
所々剥がれた部分からは凛々しく輝く銀色が覗いている
その向こう側に隠されるように存在しているのは赤い革張りの表紙
それはまるで人間の生き血を染みこませたかのように
鮮紅に染め上げられた美しいものだった
鎖が集まる中央には大きな錠前が一つ取り付けられている
まるでその赤が周りを魅了して食べ尽くすのを咎めているかのように
「さぁ、鍵を開けるわ」
「このままじゃ中身が気になってしかたないもの」
開く 開かない
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